泌尿器科 佐藤 陽介 インタビュー

早期社会復帰を実現する手術をより安全に

泌尿器科
Urology
泌尿器科 部長
佐藤 陽介

泌尿器科医としての道

私が医師を目指したきっかけは、社会に貢献できるやりがいのある職業ということが主な理由です。高校生の頃に進路を決め、その後は富山大学に進学しました。大学生活では合気道部に所属しながら、比較的厳しいカリキュラムの中で勉強に励みました。
泌尿器科を選択したのは研修医の時期です。泌尿器科には、内科的治療も外科手術もできるという特徴があり、病気の診断から治療、手術まですべてを担当できる点に魅力を感じました。初期研修の段階では選択期間がなく泌尿器科の研修はできませんでしたが、仲良くしていただいた先生方の影響もあり、後期研修の時期に泌尿器科を選択しました。

現在の多摩総合医療センターで後期研修を修了したのち、東京大学医学部附属病院、さらに千葉県がんセンターでロボット手術の技術を学ぶ機会がありました。その後、東京逓信病院で1年間、成田富里徳洲会病院で5年ほど勤務し、再び千葉県がんセンターに戻り、2024年の4月からは新東京病院で勤務をしています。

ロボット手術を中心に、診療科全体の技術を底上げ

関東周辺での勤務を振り返ってみると、特に千葉県がんセンターのような専門病院では、手術の件数が多く、薬物治療も非常に進んでいて、大学病院以上に専門的な治療ができる場面もありました。そのような環境で働くことができたのは、泌尿器科医師としてのスキル向上に大いに役立ちました。

新東京病院の泌尿器科としては、今後もロボット手術を中心に発展させていきたいと考えています。私自身、ロボット手術に強みを持っているので、後輩の医師たちにもその技術を教えていくことが重要だと思っています。彼らが同じレベルに到達できるよう、指導者としての役割を果たしながら、泌尿器科全体の技術力を高めていきたいです。

ロボット手術の指導者としての10年

私がロボット手術に興味を持ったきっかけは、千葉がんセンターで保険適用前からロボット手術が導入されていたことでした。当時は若手医師がロボット手術を行える機会は非常に限られていましたが、千葉がんセンターでは早い段階で手術ができると聞き、そこに移りロボット手術を習得しました。

その後、2014年頃には泌尿器のロボット内視鏡学会が認定する指導医の資格を取得し、約10年間ロボット手術の指導者として活動しています。

患者さんの負担を最大限軽減する先端医療

ロボット支援手術は、患者さんの負担を大幅に軽減し、機能の温存を図ることができる先進的な手術法です。特殊な鉗子をお腹に挿入し、視野を10倍以上に拡大した3Dの立体画像を見ながら、医師が少し離れた場所から遠隔操作で手術を行います。この高度な技術により、微細で震えのない操作が可能となり、従来の開腹手術と比較して多くの利点があります。

まず、腹部にできる傷が小さく、痛みが少ないため、術後の回復が早いという大きなメリットがあります。内視鏡よりも細かい部分がよく見えるため、微細な動作が必要な場面で精度が高まります。その結果、手術時間が短くなり、術者にとっても体への負担が軽減されるというメリットがあります。
また、ロボット支援手術は出血量が少なく、輸血が必要となる確率は1%以下に抑えられています。これにより、患者さんにかかる負担をさらに軽減することができます。さらに、前立腺の手術においては、術後の尿失禁の回復が早いという点も大きなメリットです。同じく性機能障害からの回復も早く、患者さんが術後により早く通常の生活に戻ることができます。

腎臓や腎尿管の手術にも対応

現在、1週間に行っている手術の件数は、細かい手術が多い週と、大きな手術が中心になる週とでばらつきがありますが、少なくても10件、多いと15件ほど執刀しています。ロボット手術に関しては、基本的には私は指導者として、後輩の医師が主に執刀を担当していますが、高難易度の手術の場合は私が執刀を担当しています。また、これまで当院で行われていなかった新しいロボット手術に関しても、初めは私が対応しています。

当院で現在行っているロボット手術の種類としては、前立腺全摘、腎部分切除、腎臓全摘、腎尿管全摘があります。特に、腎臓全摘と腎尿管全摘は最近新たに始めた手術で、これまでは開腹手術や腹腔鏡手術で行われていたものが、ロボット手術の選択肢に加わったことで、手術のバリエーションが増えてきています。

ロボット手術の適応範囲が増えています

この10年間で、ロボット手術は大きく進化しました。当初、ロボット手術は前立腺全摘だけが適応でしたが、その後、腎臓や膀胱、副腎など、泌尿器科のメジャーな手術のほとんどがロボットで行えるようになり、適応範囲が明らかに増えました。これにより、10年前と比べて泌尿器科におけるロボット手術の普及は劇的に進んだのです。

今後の展望としては、手術適応の範囲が大幅に増えるわけではないかもしれませんが、シングルポート手術のようにポート数を減らしてより低侵襲な手術が進む可能性があります。シングルポートは、従来のようにお腹に複数の小さな傷をつける代わりに、1か所だけに小さな穴をあけ、その1つの穴からロボットの器具を使って手術を行います。1か所にしか傷をつけないため、術後にできる傷が少なく、見た目もきれいに治ることが特徴です。また、傷が少ない分、手術後の痛みも軽く、回復も早い傾向があります。
しかし、国内外ともにこのシングルポート手術はまだ限られた施設でしか行われておらず、現時点では通常のロボット手術が主流となっています。

地域の先生方へ

高難易度の手術や特殊な前立腺の手術など、他の病院では手術適応外となるケースも、当院では治療が可能な場合があります。たとえば、前立腺の特殊な形状や大きさに対応した手術は、他の病院ではできないこともありますが、当院では対応が可能です。さらに、当院でのロボット支援手術は、非常に質が高いと自負しています。早ければ2時間以内で手術が終わることもあり、他の施設と比較しても、手術時間や効率において遜色ない、あるいはそれ以上の実績を持っています。

私自身の症例数も、他の関連病院と比べても遜色ないか、それ以上の手術件数を経験しています。ロボット手術は低侵襲ですが、リスクがない訳ではありません。稀ですが合併症や尿失禁が起こる可能性もありますが、私が担当した手術では9割以上の患者さんが予定どおりに退院しています。輸血が必要なケースも1%以下という結果が出ています。トラブルが起こることも少なく、安心して紹介していただけると思います。

待機期間の短縮と、新たな体制導入を目指します

今後は新東京病院に腰を据えて、引き続きロボット手術を中心に取り組んでいきたいと考えています。当院に着任してから手術件数も順調に増えてきており、さらに手術の枠を広げていきたいと思っています。現状、手術枠がいっぱいで、手術を待つ患者さんが増えており、今は2カ月半ほどの待ち時間になっている状況です。この待機期間を短縮するために、1日に2件の手術を行う体制を9月から取り入れる予定です。

また、ロボット手術件数が増えたことで、2台目のロボットが必要だと感じています。もし2台目を導入できれば、もっと多くの手術を行い、患者さんの負担を軽減できるはずです。他院では開腹手術が主流で行われているところも少なくありませんが、当院ではロボット手術を通じてより低侵襲な治療を提供していきます。