整形外科 高野 光 インタビュー

「動く」ことに関わるお悩み全てが守備範囲です

整形外科
Orthopedics
副院長 兼
整形外科主任部長
高野 光
Takano	Koh

痛みの原因を知って自分の体を知ることが大切です

整形外科と聞くと、美容整形と区別がつかなかったり、接骨院とかマッサージと同じように見ていたりする方も多いと思います。分かりやすく言うと、「動く」ことに関わる骨や筋肉、関節、神経で、困ったことがあった時に頼りになる科ということです。

圧倒的に多いのは、膝と腰の患者さんです。体に何らかの不調を訴えている人について、厚生労働省が発表しているデータがありますが、1位は男性が腰で、女性は首・肩こりです。上位に入っているのが、男女ともに腰や首、膝といった整形外科にかかる症状です。日本人の多くが体の痛みや動きにくさに悩まされているわけです。必ずしも手術が必要なものばかりではありませんが、不調の本当の原因は何かを知るために、ぜひ一度、早めに受診することをお勧めします。医学的な知識を得て、自分の体を理解していただくと今後の生活をする上で安心できると思います。

身近に起きた事故と経験が整形外科医のきっかけに

僕は宇宙飛行士になるのが夢でした。高校1年生の時、同級生が水泳の飛び込みに失敗して、脊髄損傷になってしまいました。彼は車いすでの生活をすることになったのです。クラスの人気者であんなに元気だったのに、一日で人生が変わってしまうことを目の当たりにして、そこから医者を目指そうと思い始めました。医学部に進んだ僕は4年生の時にバスケットボールの試合中、前十字じん帯を切ってしまいました。手術を受けたので1年間、整形外科のお世話になり、スポーツ整形を専門にしようと思っていました。しかし、大学で勉強をするうちにだんだんと脊椎に興味がわくようになり、今では脊椎の手術が自分のライフワークになりました。

整形外科が扱う病気は、生命に直結するわけではありません。でも、自分の思い通りに走れなかったり、生きたい場所に自由に行けなかったりすると、人生を楽しめないし、生きがいを感じられなくなります。人間は生きていればいいわけではなく、生き生きとした自分らしい人生を送ることがとても大切なことだと気付かされたのです。その手助けができる整形外科はとても魅力的な診療科だと思っています。

患者さんの人生を最優先に考えて治療します

僕は患者さんと向き合う中で、自分の家族だったらどうするかを一番に考えています。背骨が曲がった人に手術で金具を入れたら背中を真っすぐにできますが、今度は背中を曲げられなくなるので足の爪が切れなくなったり、畳の上に座ったりすることが難しくなります。それまで痛みがあってもこなせていた家事や畑仕事ができなくなれば、生活スタイルが変わってしまいます。背中が曲がって痛くても、身の回りの家事は自分でやりたいから手術はしないという人もいます。それはその人にとって正しい選択です。自分のおばあちゃんだったら、親だったら、果たしてその手術を選ぶかどうかを最優先に考えなければならないので、本当に手術の必要があるかどうかをよくご本人と相談して、決めるようにしています。

その際は患者さんに分かりやすく伝えることを意識しています。こちらが説明したつもりでも患者さんの頭に残っていないことも多いので、僕は疾病ごとに分かりやすい表現でまとめた7~8枚の説明用紙を使ってお話します。説明用紙は病院で共有し、患者さんにお渡ししています。説明用紙には治療の限界についても触れています。年齢や体質によって異なるので、例えば「手術しても若い頃のように戻れることは期待できませんが、痛みはだいぶ軽くなると思います」などと記しています。

総合病院の整形外科はバックアップ体制が強みです

整形外科単科病院は全国にもいろいろありますが、患者さんが合併症を抱えていたり、全身的な問題があったりすれば、手術を断ることがあります。仮に手術が受けられたとしても、その後に何か問題や想定していなかったことが起きた場合、その病院で治療が受けられないこともあります。整形のことで入院していても、その間にほかのことが起こらない保証はないからこそ、僕は整形外科も全身を考えた上での治療をやるべきだと考えています。ですから、当院のようにたくさんの診療科があってバックアップできる体制を整えている総合病院は強みになると思っています。このようなこともあり、今後は総合病院の中での整形外科を極めていきたいと思います。

完璧に治療することはもちろんですが、全身麻酔をして行う手術中に何が起きても、病院の総合力でカバーできるような整形外科を目指しています。技術も治療もどんどん複雑化していく中で、それに対応してより新しいものを生み出していきたいと思っています。

正しい情報を知って自分の体のケアを

インターネットが発達したことによる情報は、まさに玉石混交です。例えばヘルニアの8~9割は2カ月くらいの間に自然に治ります。飛び出たヘルニアを体内の食細胞が邪魔なものだと認識して食べてしまうからです。それにも関わらず、ヘルニアを切らずに治すことを勧める医者にかかってはいけないといった論調の情報があります。どれが正しい情報なのかインターネットでは判断できないこともありますので、やはり医療機関を受診して正しい知識を持って自分の体をケアしてほしいと思います。

歳だからと諦めず、まずはご相談ください

腰や関節の痛みで困ったら、まず相談してください。いろんな病気を抱えていたり、もう歳だからと自分で勝手に諦めたりせずに、とにかく相談してほしいと思います。何とかとか今より良い生活ができるような手助けをしていきます。