集中治療室 松尾 耕一 インタビュー
手術直後の診察と治療を行うのが集中治療室です
1日も早く日常生活に戻れるよう、全力を尽くします
集中治療室(ICU)は、主には呼吸不全や循環不全などの生命に直結するような疾患、また手術後の患者さんを診察し治療します。当院の場合、手術後の患者さんが中心で、最も多いのは心臓外科、次いで脳外科、そして一般外科の手術後の患者さん方を集中治療室で診ています。手術後から合併症を起こすことなく、1日も早く元の生活に戻れるようにサポートするのが、ICUの役目です。他の診療科はそれぞれの専門ごとに分かれていますが、ICUは例えば心臓の手術後でも心臓だけ診るのではなく、各科の医師と協力し全身を管理するのが仕事です。重症な患者さんが多いため忙しいですが、やりがいのある仕事です。
人の役に立てることが生きがいです
困っている人を助けたり、人の役に立てたりする仕事をして、それが自分の生きがいになればいいと思って、高校生の時、医師になろうと決めました。 基本になるのは内科だと思い、内科医を目指しました。内科では重症な患者さんを持つことが多かったのですが、重症患者さんはICUに集めて診た方が治療上のメリットが多く、患者さんの予後もいいと言われていたため、ICUで働きたいと思いました。そのために麻酔科も勉強しました。内科専門医の資格を取得後、さらに重症な患者さんに特化した治療をしたいと思い、現在に至っています。
最新機器と五感を使って患者さんの容態をチェックします
ICUに来た患者さんに関しては、まずは意識が戻るかどうか、手術後に合併症を起こしていないかについて注意を払っています。患者さんは人工呼吸器をつけていたり、鎮静剤などを使っていたりするので、お話できないことが多く、症状を伝えていただくことも難しくなります。その場合は、患者さんの血圧、脈拍数などのバイタルサインや、さまざまな検査結果のほか、ご本人の表情を見て推測したり、触診や聴診したりもします。電子機器による数値だけでなく、視診、聴診、触診も非常に大事なので、全ての神経をフルに使ってわずかな異常も見逃さないようにしています。
医療スタッフ一丸となってサポートします
ICUには看護師をはじめ、薬剤師、リハビリスタッフ、栄養士、また生命維持管理装置の操作・保守・点検する臨床工学技士など、いろいろな職種のスタッフが集まって治療をしています。医師だけの力ではなく、多職種の力を合わせなければ、いい治療はできません。ですから、医療スタッフ全員が同じ気持ちとスタンスで治療に当たっています。直接お話しができない患者さんが多い中で、看護師がご家族からお聞きした患者さんの情報などを伝えてもらい、患者さんの背景にあるものや、これまでの人生なども考えて治療に当たるよう心掛けています。
ICUを出たら治療はおしまいではなく、仕事をしている方なら社会復帰、ご自宅で暮らしている方なら元の生活に戻れるように、長期的な視点で治療することも大事だと思っています。
患者さんの元気な姿が励みに
残念な結果になってしまうこともありますが、その時は患者さんを忘れないよう、心に刻みます。そして次に同じような患者さんが来たら、今度こそ助けられるように自分のスキルを上げることを常に意識しています。ですから、一命を取り留めた患者さんが元気になって歩いて帰られると、とても嬉しく励みになります。ICUから直接退院することは基本的にありませんが、患者さんが退院の前にご挨拶に来てくれることがあり、そんな時は本当に良かったと思います。重症な患者さんばかりですし、管理も全身に及ぶので、精神的にも肉体的にもハードではありますが、その分、やりがいを感じています。
人間味あふれる医療で患者さんと向き合います
当院は各科に優秀な医師がそろっているので、安心して手術・治療を任せられます。そして看護師などコメディカルのチームワークが抜群で、重症な患者さんが少しでも早く良くなるように全力を挙げているところが自慢です。手前みそになりますが、私から見てもコメディカルの活躍は素晴らしいものがあります。医師以上に看護師は患者さんご本人やご家族との関りが増しますが、ICUの看護師はとても人間味があふれる温かい看護をしています。臨床工学士、リハビリスタッフなど多職種の人が常駐していますが、忙しい中でとても一生懸命に働いています。
各診療科をつなぐ強い横糸を目指して
患者さんとのコミュニケーションはとれないことが多いのでその分、医師同士やスタッフ同士のコミュニケーションを大切にしています。各科の先生が縦糸だとすると、集中治療医はそれをつなぐ横糸のような役割です。当院は非常に強い縦糸がそろっているので、負けないような強い横糸になれるようにやっていきたいと思います。両方が強ければしっかりした病院になりますので、最高の医療を提供できるはずです。患者さんやご家族に寄り添い、ほかの科の医師やスタッフと一緒に、患者さんが早く社会に戻れるように力を注ぎたいと思います。医学は日進月歩で新しい治療や薬が出るので、常にアンテナを広く高く張りながら最新のものを取り入れ、より良い治療ができるように、精進していきます。