ABIOMED社循環補助装置Impella

当院では機械的循環補助装置であるImpellaを使用して、心原性ショックを呈するチャレンジングな症例を積極的に治療しています。心原性ショックとは「心臓の機能不全により末梢臓器への酸素供給が不十分となり、臓器障害が生じた状態」と定義されており、主要な臨床兆候としては、血圧低下、末梢循環不全、心係数低下、左室拡張末期圧上昇があり、急性冠症候群(ACS)により極度に血圧が低下した場合などはその典型とされています。また、心臓外科術後(冠動脈バイパス術など)にも、心臓機能が回復せず、血圧が低下することがあります。Impella を用いた循環補助時には、全身血液循環の改善とともに、心室から直接脱血することで左心室の負荷が軽減されることが期待されています。

左心室内に留置されたImpella

従来の循環補助装置である大動脈バルンパンピング(IABP)、体外式膜型人工肺(ECMO)と比較してImpellaがより有用である場合があり、またECPELLAと呼ばれるECMOとImpellaを併用する治療も行っています。また当院は近隣のがんセンターと密に連携しており、最近話題となっている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)である劇症型心筋炎を発症した症例を転院で受け入れ、ステロイドなど薬剤治療単独では血行動態が不安定となる場合、心臓機能が回復するまでImpellaで補助する治療も行っています。2017年10月に日本で初めてImpellaを用いた治療が行われ、2020年4月に当院でも導入しました。2024年4月時点で128例の症例において使用しており、県内では最多の経験を有しています。Impellaの管理は医師のみでなく、臨床工学技士(ME)、看護師、臨床検査技師など多職種の協力が必要であり、ハートチームの総合力が試されます。

(日本アビオメッド社より 画像・文章一部提供)

当院での機械的循環補助装置の使用経験