経カテーテル左心耳閉鎖術

心房細動の患者様に対する経カテーテル左心耳閉鎖デバイスWATCHMANが
2024年5月より新しくなりました

対象となる疾患

非弁膜症性心房細動

適応となる患者様

脳梗塞など血栓塞栓症のリスクが高いと判断され、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を毎日内服する必要があるけれども、出血リスクが高い、実際に出血イベント(胃潰瘍、鼻出血、皮下出血など)があり、長期の内服継続が難しい患者様

適応の詳細

適応についてはスコアリングなど医師による判断が必要です。

左心耳閉鎖システムに関する適正使用指針

1. 適応基準

  1. 選択基準

本品の選択基準については、添付文書の使用目的に従って使用すること。
本治療はCHADS2スコアまたはCHA2DS2-VAScスコアに基づく脳卒中および全身性塞栓症のリスクが高く、長期的に抗凝固療法が推奨される非弁膜症性心房細動患者にのみ考慮されるべきであり、これらの患者のうち以下の要因の1つまたは複数に適合する患者に対して、長期的抗凝固療法の代替として検討される治療である。
以下のうちの1つ以上を含む、 出血の危険性が高い患者。

  • HAS-BLEDスコアが3以上の患者
  • 転倒にともなう外傷に対して治療を必要とした既往が複数回ある患者
  • びまん性脳アミロイド血管症の既往のある患者
  • 抗血小板薬の2剤以上の併用が長期 (1年以上)にわたって必要な患者
  • 出血学術研究協議会 (BARC) のタイプ3に該当する大出血の既往を有する患者

経カテーテル左心耳閉鎖術

心房細動が続くと心臓の中にある左心耳というポケットのようなスペースに血液の澱みが生じ血栓が形成されます。それが脳に飛んでいくと大きな脳梗塞を発症します。これが心原性脳塞栓です。Boston Scientific社のWATCHMANという道具で左心耳を詰めてスペースを無くすことで大きな血栓ができないようにします。全身麻酔下、経食道心エコーガイド下に大腿静脈アプローチで施行します。通常、穿刺部の傷は小さく(数mm程)、出血は少量のみです。

患者様にとってのメリット

将来的に抗血栓薬を減量、中止できる可能性があります。

術前検査

経食道心エコーという胃カメラのようなエコー検査を行い解剖学的にWATCHMANに適応するかどうかを判断する必要があります。喉にゼリーやスプレーで麻酔をかけて、さらに点滴で鎮静薬を投与し、少し眠たくなった状態で検査を行います。また、腎機能が許容される患者様においては、造影CT検査を行い、左心耳の形態の確認や冠動脈狭窄のスクリーニングを行っています。例えば、左心耳が大き過ぎてカテーテル治療の適応外となることがあります。

WATCHMANの進化

2019年9月に日本に導入された際にはWATCHMAN 2.5、その後2021年10月にWATCHMAN FLX、今年2024年5月よりWATCHMAN FLX PROという最新バージョンに改良されています。より安全に左心耳内に留置することが可能となり、より血栓が付着しにくいコーティングがなされています。

WATCHMAN以外の治療方法

WATHCMANの適応外であっても、外科的内視鏡手術という別の選択肢もあります。小さな傷で左心耳を外側から医療用クリップで挟んで閉鎖することが可能です。カテーテル治療は心臓内科、手術は心臓血管外科が担当していますが、日頃からハートチームとして協力して検査や治療を行っていますのでご安心下さい。

治療担当医師

心臓内科 長沼 亨
外来担当 月曜日:午前/木曜日:午前