心房中隔欠損症(ASD)

経カテーテル閉鎖術

外科手術に比べて侵襲の低い治療法です。
日本では2005年に承認され、
これまで10000例以上の患者さんが治療を受けておられます。

心房中隔欠損症(Atrial septal defect:ASD)について

心房中隔とは?

心房中隔とは、右心房と左心房の間を隔てている壁の事を言います。

心房中隔欠損症とは

心房中隔に穴が開いている状態を心房中隔欠損症といいます。 生まれつきの心臓の病気「先天性心疾患」で、1,000人に1人くらいの頻度と言われています。

心房中隔欠損症では左心房から右心房へと血液の漏れが生じるため、結果として肺に流れる血液が通常よりも多くなり、肺に血液がたまった状態(この状態を肺うっ血といいます)となります。

自覚症状がはっきりしない患者さんもおられますが、年齢を重ねるごとに病状が悪化することもあります。病状が悪化してからの手術では術後経過が思わしくないこともあり、学童期に治療が行われることもあります。
大人の場合でも放置しておくと症状は進行していきますので、早めの治療が勧められています。

心房中隔欠損症の症状

心房中隔欠損症の代表的な症状としては、下記が挙げられます。

動悸や息切れ

運動が長続きしない

脈が急に速くなる、乱れる

身体がむくむ

経カテーテル閉鎖術とは?

経カテーテル閉鎖術では、ニチノールと呼ばれる特殊な金属(形状記憶合金)の細い線から作られたメッシュ状の閉鎖栓を使用します。 この閉鎖栓は、真ん中の部分がくびれた形をしています。

両側の広がった部分(ディスク)とくびれた部分(ウエスト)には、特殊な布(ダクロン)が縫い付けられています。 この布は、心臓の手術の時に利用される人工血管などと同じ成分です。

くびれた部分を心臓の欠損孔の部分に合わせるように入れて、2枚のディスクで左心房と右心房の両側から穴を挟み込んで(サンドイッチのようにして挟み込んで)、心房中隔の穴を閉じます。

近年は外科的な心房中隔欠損の閉鎖術に代わり、患者さんの体への負担を少なくし、かつ安全に行える治療方法として国際的に広く用いられてきています。

治療の方法

経カテーテル閉鎖術による閉鎖栓の設置方法

治療に際しては、患者さんの安静と苦痛の除去、経食道心エコー(胃カメラのような管にエコーの機能がついた装置)でモニターするために、人工呼吸器を使った全身麻酔を行います。
そのうえで緻密なカテーテル操作によって、閉鎖栓を心臓の目的の部位にきちんと留置できているかどうか、レントゲンによる透視像と経食道心エコーを使ってモニターしながら、安全を確認して留置します。

内服していただくお薬

治療前から服用していただくお薬として、血液をさらさらにする薬(抗血栓薬=抗血小板薬/抗凝固薬)があります。 これは閉鎖栓に血液の塊(血栓)が付くのを予防するためです。基本的には、治療後6カ月間は抗血栓薬を服用していただきます。

術後のフォロー

経カテーテル閉鎖術による治療を受けた後は2~3日間入院していただき、胸部レントゲン、心電図、心エコー検査、血液検査を受けていただきます。退院後も必要に応じてこれらの検査を行い、定期的に外来でフォローしていきます。

経カテーテル閉鎖術の対象となる患者さん

全ての心房中隔欠損症が対象となるわけではありません。「二次孔欠損型」の心房中隔欠損で、解剖学的にカテーテル閉鎖に適する場合が対象となります。

経カテーテル閉鎖術による治療のメリットとデメリット

治療方法 外科的治療 経カテーテル閉鎖術
治療内容
  • 右心房を切開し、欠損孔を直接閉鎖、あるいはパッチで閉鎖
  • 閉鎖栓を用いたカテーテル治療
メリット
デメリット
外科的治療
外科的治療

メリット

全てのタイプの心房中隔欠損に対応可能
直視下に病変を確認し、欠損孔を閉鎖する事ができます。
その為、欠損孔の大きさ、位置などにかかわらず、確実に欠損孔を閉鎖する事ができます。

デメリット

人工心肺が必要
開胸し心臓をいったん止める必要があるため、人工心肺(※1)を用いる必要があります。 そのため、人工心肺に関連する合併症が起こる可能性があります。
身体への負担が大きい
開胸、さらに右心房を切開するため、回復にかかる身体への負担も大きくなります。
入院期間が長引く
術後の入院期間は、おおよそ1週間程度です。
開胸手術の傷が残る
胸部を切開する為、開胸手術の傷跡が残ります。

※1 人工心肺:心房中隔欠損症など心臓の穴を閉じる手術では、一時的に心臓の動きを止めて欠損部を人工の布で塞ぐか、糸をかけて直接縫い合わせます。その間心臓や肺に代わって、血液に酸素を供給し全身に血液を送り出す働きをもつ機械を人工心肺と呼びます。

経カテーテル閉鎖術
経カテーテル閉鎖術

メリット

身体への負担が少ない
開胸手術を行わずに欠損孔を塞ぐことができるので、その分、外科手術に比べて低侵襲となります。
その為、開胸手術が出来ない、又は手術リスクが高い患者さんでも治療を受ける事ができます。
人工心肺を利用しない
開胸手術を行わない為、人工心肺を利用しません。 それに伴い合併症のリスクも低くなります。
美容面でのメリット
経カテーテル閉鎖術では、カテーテルを挿入するために鼠径部(大腿部の付け根あたり)を穿刺するだけで済みますので、外科的治療と比べ傷跡が目立たないというメリットがあります。
入院期間が短い
外科手術に比べ低侵襲なので、その分、入院期間も短く、術後2~3日程度で退院することができます。

デメリット

解剖学的に適応のない場合がある
経カテーテル閉鎖術の場合、すべての心房中隔欠損症が治療できるわけではないことです。
穴の大きさが大きい場合(直径30mm以上)や穴の位置が一方にかたよっていて閉鎖栓を入れるには適していない場合(リム欠損、と呼ばれる状態です)、 穴が複数個開いている場合には、この方法による治療は難しくなります。 また治療を行うことができた場合でも、わずかな血液の漏れが残る場合があります。
これらのような場合再度外科的な手術を施行しなければならないことがあり得ます。
特有の合併症
経カテーテル閉鎖術特有の合併症があります。

治療に際して、万が一閉鎖栓をうまく留置できない場合には、治療の途中であれば撤収することも可能です。
留置した後、体の中で位置がずれてしまった場合には、閉鎖栓を取り除くために緊急に開胸外科手術を必要とすることもあります。
このようなことがないよう、担当医師は万全の注意を払って治療を行います。

施行から退院までの流れ

STEP1 初診外来
これまでの病状および現在の症状などをうかがい、外来で心電図、胸部レントゲン、採血、心エコー検査などスクリーニング検査を行います。
心房中隔欠損症の治療方法について全体的な説明をさせていただき、治療をご希望・ご検討される方は検査入院を予定させていただきます。
STEP2 検査入院
CT検査、カテーテル検査、経食道心エコー検査など必要な精密検査を行い、 カテーテル治療に適するかどうかを検討します。
治療に対するご本人・ご家族のご希望もゆっくりとお話を伺います。
STEP3 治療
万全の体制で治療に臨みます。一緒に頑張りましょう。
STEP4 術後の回復
術後3時間で飲水、翌日朝から食事が始まります。
STEP5 退院
一般的には3日で退院します。

当院での取り組み

代表医師メッセージ

新東京病院 長沼亨医師
長沼 亨
心臓内科部長
卒大 / 卒年
山口大学 平成 16 年
専門領域
循環器一般、構造的心疾患(弁膜症、TAVI、心房中隔欠損閉鎖など)

2年間のイタリア留学中に、世界のスーパーエキスパートから本当にたくさんのことを学ばせて頂きました。
現在の私の使命は、日本の患者様に海外の最先端施設に負けないような質の高い医療を提供することです。
弁膜症など心臓血管治療については、施設間で治療の質、経験数に大きな差があるのが現状です。
心臓病でお困りの患者様は、是非お気軽にご相談下さい。

よくあるご質問

Q.経カテーテル閉鎖術が受けられないのはどのような場合ですか?
A.欠損孔の大きさや形、位置などによって、適応が無いことがあります。
詳細については、担当医師にご確認ください。
Q.どのような合併症がありますか?
A.経カテーテル閉鎖術による合併症としては以下のものがあり得ます。
  • 心臓、血管の穿孔
  • 閉鎖栓の脱落
  • 心臓壁のびらん穿孔
  • 血栓症、塞栓症
  • カテーテル挿入部からの出血や血腫
  • 不整脈
  • 頭痛
  • 造影剤等に対する薬物アレルギー
  • 溶血
  • 感染症
  • その他ショックなど
Q.入院期間はどのぐらいですか?
A. 順調に経過した場合には、術後2~3日以内に退院されることが多いです。
ただし、患者さんによってはリハビリが必要なこともあります。
Q.治療後は普通に運動できますか?
A. 治療後1ヶ月間は、激しい運動を避けて頂く必要があります。
Q.空港の金属探知機を通る時はどうしたらいいですか?
A. 閉鎖栓に磁性はありませんので、身体に異変をきたすことはありません。
その他、保安検査上必要な場合は、患者カードを空港警備員に提示してください。
詳細は担当医師にご相談ください。

診療案内

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●長沼医師 診察日
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お電話での相談
TEL:047-366-7000

受付時間:月曜日~土曜日(9時00分~17時00分)
担当:心臓内科秘書 大野

*都合により不在となる場合もございますが、何卒ご了承下さい

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