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消化器がん腹腔鏡・ロボット手術センター

上部消化管(食道・胃)
胸腔鏡・ロボット支援食道がん手術

※ ロボット手術は2019年4月からスタートする予定です

 

食道切除術で切除される範囲(赤い破線の範囲)

 

食道は、のど(咽頭)と胃の間に位置する管状の臓器です。心臓、大動脈、気管、肺などの臓器や、背骨に囲まれていて、上半身のほぼ中心部を走行しています。蠕動(ぜんどう)運動をすることによって、飲み込まれた食べ物をスムーズに胃まで運び届けることが主な機能です。食道の入口と出口にある括約筋が食べ物が逆流しないよう作用しているため、食後すぐに横になっても食べたものが逆流することはありません。

 

食道は、頚部・胸部・腹部の三つに分けられますが、食道がんのほとんどは胸部食道に発生します。胸部食道に食道がんが発生した場合、胸部だけでなく、頚部や腹部の食道も切除する必要があります。食道切除術は、患者さんにとって大きな体力的負担のかかる手術ですが、胸腔鏡・腹腔鏡を使用してきずを小さくすることで体力的負担が大幅に軽減されます。

従来の開胸・開腹手術(左)と胸腔鏡・腹腔鏡手術(右)のきずの違い

 

これまでの全国集計結果では、胸腔鏡を使用した手術であっても概ね50%に何らかの合併症が生じ、術後在院死亡率は3%を上回っています。その様な中、私たちは多くの胸腔鏡手術の経験を通して、合併症の少ない胸腔鏡下・ロボット支援下食道がん手術を開発し実践してきました。

 

   肺にやさしい手術

術後合併症の中では肺炎の頻度がもっとも高く、手術中に食道を切除する際に肺を圧迫しますので、それによる肺へのダメージや、手術後ののどの働きの低下による誤嚥(のみ込む際に間違って肺に吸い込むこと)が原因とされています。当センターでは、肺へのダメージを少なくするために、食道を切除する際に胸腔鏡下に胸腔内の気圧を上げて肺を直接触れずにしぼませる方法を取り入れており、これによって手術後の肺炎の発生率を大幅に少なくしています。

 

   頚部(くび)にきずの無い手術

また、食道がんは高率に頚部のリンパ節に転移するため、胸腔鏡を使用した手術であっても頚部に外から別切開を加えて頚部のリンパ節を切除するのが一般的です。さらにその後、その頚部のきずの中で、口側に残った食道と胃管(細長くしてお腹から引き上げてきた胃)をつなぎ合わせます。しかし、頚部を切開することは少なからず手術後の嚥下機能の低下の原因となります。私たちは、外から頚部を切開せずに胸腔鏡で頚部のリンパ節を切除し、さらに食道と胃管を胸腔鏡下につなぎ合わせる技術を開発しました。このことにより、胃管の血流の良い部位を利用できるようになったため、一般的に15%程度とされる縫合不全の発生率が、約1%と極めて低率に抑えられています。頚部切開を行わない完全内視鏡下食道がん手術は究極の低侵襲食道切除手術であり、これまで手術が難しかった高齢の方や栄養不良の患者さんにも手術の選択肢が広がります。この方法は私たちが開発し本格的に導入した方法です。十分な経験が必要なため、この方法を適切に実施できる病院・施設は限られています。

 

③ 声帯にやさしいロボット支援下手術

食道がん手術のもうひとつの難問は、がんの転移が声帯を動かす反回神経の周囲のリンパ節に多いことです。反回神経周囲のリンパ節の切除により、手術後に反回神経が麻痺して、かすれ声(嗄声)や誤嚥が生じることが少なくありません。私たちはこの難問を解決するために、手術支援ロボットを導入して手術の精度をさらに向上させています。

 

さらにお腹のリンパ節の切除と胃管の作成にも腹腔鏡を使用していますので、手術後の胸とお腹のきずは小さいものばかりになります。食道がんの外科治療が必要な方はぜひ当センターへご相談ください。


 

上部消化管(食道・胃)
胸腔鏡・ロボット支援胃がん手術

※ ロボット手術は2019年4月からスタートする予定です
 

胃は、食道から運ばれてきた食物を消化する袋状の臓器です。入口と出口に逆流防止機構があり、食物を一定時間かけて軟らかくした後、少しずつ十二指腸に送り出します。強力な酸性の消化液(胃酸)を12リットルほど分泌しています。

 

胃がんに対する腹腔鏡手術は術後の痛みが少なく回復が早いという利点があり、さらに必要に応じて胃の周囲にある臓器や血管、神経を確実に残す精密な手術を行なうことで、手術による身体への侵襲(ダメージ)を最低限に抑えることができます。腹腔鏡手術で胃がんを確実に切除するには専門的な高い技術が要求され、手術の確実性は施行する外科医の技術によって大きく左右されます。当センターでは、胃がんに対する全国トップレベルの経験に基づいて、可能な限り低い侵襲で確実にがんを切除する腹腔鏡下・ロボット支援下胃がん手術を提供しています。以下のように、当センターの手術には他施設にない2つの特長があります。

 

  進行胃がんなどあらゆる病状に対応

全国的に、進行胃がんの患者さんに対する腹腔鏡手術はあまり行われていません。再発率などの長期成績に関するデータが少ないことも理由のひとつですが、手術手技が複雑で難度が高いことがもっとも大きな理由です。進行胃がんに対する手術では、胃やその周辺の切除範囲が大きくなり、がんを確実に切除するために、より複雑な操作が必要になります。私たちが行っている胃がんの腹腔鏡手術手技は5年間にわたる臨床試験によって、進行胃がんに対しても安全であることが確認されています。また、高度に進行した病状にも十分対応することができる一方で、胃の機能を可能な限り温存することを目的とした様々な手術をすべて腹腔鏡下に行える体制を整えています。当センターで腹腔鏡下に施行可能なおもな胃がん手術は、幽門側胃切除術、噴門側胃切除術、胃全摘術、残胃全摘術、神経温存胃切除術、幽門保存胃切除術、胃局所切除術です。

 

各術式における胃の切除範囲(例)

 

  全国トップレベルのロボット支援胃切除術

腹腔鏡手術は身体への侵襲(ダメージ)を最低限に抑える優れた手術法ですが、手術器具の動作制限のために繊細な操作が困難な場合があります。こうした欠点を克服するために開発された手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)は、お腹の中で器具の先端を自在に曲げることができるため、動作制限が極めて少なくなり、その登場によって腹腔鏡手術の精度、安全性が飛躍的に向上しました。当センターでは、本邦でもっとも早い時期(2012年)から胃がんに対するロボット支援下手術を行っているエキスパートが、その豊富な経験をもとに最高水準の手術を行っています。

 


 

スタッフ紹介

 

上部消化管(胃・食道)  岡部 寛 (消化器外科 部長)

京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院 外科、島田市民病院 外科、米国UCSFがんセンター、京都大学 消化管外科、市立大津市民病院 外科を経て当院に勤務。日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本内視鏡外科学会評議員・技術認定医・ロボット支援手術検討委員会委員・ガイドライン作成協力委員、日本胃癌学会評議員、日本食道学会食道外科専門医、ロボット支援手術術者認定資格、ロボット支援手術食道領域および胃領域プロクター、アメリカ外科学会正会員(FACS)、京都大学医学博士。食道外科、胃外科の低侵襲手術のエキスパート。腹腔鏡下手術における様々な部位の消化管吻合法の開発、標準化に尽力し、国内外の施設で講演、実技指導を行う。我が国におけるロボット支援手術の先駆者のひとりで、食道領域・胃領域のプロクター(指導医)として、国内多くの病院でロボット支援手術の導入支援を行っている。